このようにみると、ロシア側の偽旗作戦もフェイクニュース拡散も、すでに西側諸国からは見透かされている。今のところ、ロシア側の情報戦が成功している気配はない。では、情報工作に踊らないウクライナやNATO側に対して、プーチンは今後、どう対応するのか。国際的な非難を一身に浴びる覚悟で、ウクライナ侵攻を強行するのだろうか。

プーチンにとってすでに事態は「進むも地獄、引くも地獄」か

 実は、欧米の情報機関も今回はロシア側の意図を明確には掴んでいないという話も聞こえてきている。ただ明確に言えるのは、プーチンが極めて厳しい状況に追い込まれているということだ。

 NATOは、ウクライナとNATOを切り離したいプーチンの要求を無視するかのように、今回ウクライナに武器弾薬を提供しているし、部隊などへの訓練を担当する人員も送り込んでいる。さらにロシアとの国境地域では、欧米情報機関が以前よりも活発に諜報活動を行なっている。米軍も欧州に増派しているし、NATOの結束は従来にないほど強固になっている。

 現状を見る限り、仮にロシアがウクライナを侵攻し、首都キエフを制圧したとしても、欧米諸国はロシアに対して軍事的にも経済制裁面でも極めて強い対応に出るだろう。ロシアにしてみればウクライナ侵攻で得られるものより失うもののほうが大きくなるはずだ。

 では、侵攻をやめて部隊を引き上げればどうだろう。そうなれば、国内で「プーチンは弱腰」というイメージを抱かれるだろう。すなわち彼の権力基盤が揺らぎかねない事態となる。

 となれば、国内からは弱腰と見られない程度の、そしてNATO側から強烈な経済制裁がなされない程度の、小規模な示威行動でお茶を濁す可能性があるのではないか。ただ、ロシア部隊が待機している地域は極寒で、いつまで部隊の士気が続くかわからない。ならば、近いうちに小規模な軍事行動が起きる可能性が否定できない。

 こうしている間にも、少しでも状況を有利にもっていくべく、ロシアとNATOそれぞれの情報工作は展開されている。