(写真はすべて宮沢洋)

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

「USB」という略語をご存じだろうか。いや、パソコンの横に差し込むあれ(Universal Serial Bus)ではない。私(宮沢)が建築雑誌「日経アーキテクチュア」に配属された1990年ごろ、編集部では「USB」が「アーバンスモールビル」を意味していた。都市部に立つ小規模なオフィスビルや商業ビルである。今回は、池袋西口にあるこの建築(記事冒頭写真)を通して、バブル期の若手建築家たちが、いかにUSBにエネルギーを注いでいたかについて書きたい。

 所在地は豊島区池袋2-53-10。池袋駅西口を出て、マルイが見えたら劇場通りを右(北)に曲がり、ロサ会館を右手に見ながら数分歩いた交差点(池袋二丁目)の左手角(南西側)に立つ。

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 エッジがキンキンにとがったコンクリート打ち放し。限られた敷地の中で1階に設けた柱廊(コロネード)。そしてなんといっても立面(りつめん)が印象的。北・東の前面道路ではなく「交差点」に正対する形で立面がデザインされている(建築の記事では「ファサード」と書くべきところだと思うが、個人的にファサードという内輪っぽい言葉が嫌いなので「立面」でいく)。年月を経たことによる打ち放しの黒ずみもあって、その立面は古代ローマの遺跡を見るような、ただならぬオーラを漂わせる。