河野一郎邸焼き討ちに経団連襲撃

 もう一人、鮮明に記憶に残る右翼の大物がいる。

 野村秋介。彼の生涯も凄まじい。

 1935年東京生まれの野村は横浜で育ち、高校中退で愚連隊に入り、網走刑務所で服役中に民族主義に目覚めたという。出所後「憂国道志会」を結成。日本の新右翼として活動を始めるが、その活動と逮捕歴が半端なく凄まじい。1963年河野一郎邸焼き討ち事件で懲役12年の実刑判決。1977年、元盾の会(三島由紀夫が作った右翼組織)のメンバーら3人と共に経団連襲撃事件を起し懲役6年の実刑判決。つまり河野邸焼き討ちからの20年のうち18年を塀の中で過ごしていることになる。

微笑む野村秋介。時折見せるその心の裏側に凄みが見え隠れしていた。(写真:橋本 昇)

 私が初めて野村に会ったのは彼が6年の刑期を終えた“出所祝い”の取材であった。

「やはり娑婆はいい。久し振りの酒が美味い」

 と、彼は美味そうに唇を濡らしながらごくっとビールを喉に流し込んでいた。