第5波が収束し、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は低水準を維持している。しかし、第5波で重症化した患者は、今も集中治療室の中で長い闘いを強いられている。重症治療の最前線から、讃井教授が報告する。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第70回。

 緊急事態宣言の解除から1か月が経ちました。その間も新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は減少を続け、医療現場も一息つける状況になりました。

 10月28日時点で、埼玉県では、新型コロナ感染症で入院中の患者は68人。そのうち、軽症が24人、中等症が27人、重症が17人となっています。1日当たりの新規陽性者数は10人前後で、県調整本部で入院調整を行なっている件数は1日当たり1桁台に、重症化して重症病院への転院調整が必要となるのは週当たり1例程度にまで落ち着きました。

長期にわたる重症化患者の治療

 とはいえ、県内重症患者17人のうち6人の方がECMO(体外式膜型人工肺 第3回参照)を回しており、長く苦しい闘いを続けています。私が勤務している自治医科大学附属さいまた医療センターでも、現在3人の患者がECMOを回しています。いずれも30代から50代の現役世代で、3人ともすでに40日以上ECMOを回し続けており、もっとも長い方は60日を超えています。当院では第5波で9人の患者の治療にECMOを用いたのですが、その中には100日近くECMOを回した方もいました。ECMOが必要になるほど重症化してしまうと、回復できたとしても非常に時間がかかるのです。