岸田氏出馬へ 高市氏・下村氏も

 菅首相以外の総裁選候補者の顔ぶれから見ていこう。

 まず岸田文雄・前政調会長が総裁選出馬に意欲を見せている。岸田氏は8月19日、派閥(宏池会)の会合で総裁選に関して「自民党が幅広い選択肢を持つ政党であるということを示す大変貴重な場である」と述べ、出馬への意欲をにじませた。

 しかし、依然として宏池会に大きな影響力を持つ古賀誠元幹事長は同日、CS番組の収録で「利口な岸田氏だから、こういう状況で出馬まで踏み切る決断には至らないのではないか」と語っている。古賀氏は派閥の後継者である岸田氏よりも、菅首相を評価していることで知られる。「決断力に乏しい」「迫力がない」と言われている岸田氏だが、ここで強面の“師匠”の静止を振り切り、出馬に踏み切れば総裁選は盛り上がる。

 一方で、「最終的に岸田氏は自重して出馬しないのではないか」との見方をする政界関係者も多い。昨年の総裁選で菅首相に敗れて以降、岸田氏が党内で評価を高めるような活躍はなかった。今回はいったん出馬を見送り、次回で総裁の座を狙いに行った方が良いとの判断だ。

 だが岸田氏陣営は8月15日ごろから出馬に向けた準備に入っている。具体的には、政策集の取りまとめを進めているのだ。総裁選の日程が確定する8月26日中にも正式表明する可能性がある。

 すでに「出馬宣言」を済ませた議員もいる。8月10日発売の『文藝春秋』においていち早く総裁選に名乗りを上げた高市早苗・前総務相だ。

 だが、今回は「出馬宣言」して存在感をアピールしただけで成功、本気で総裁の座を狙いに行っているわけではないと見られている。永田町界隈では「無派閥だから推薦人が集まらない。そもそも出馬できない」「安倍晋三前首相が高市氏のバックにいるから細田派が推薦人を貸して出馬はできる」などと言われている。確かに、高市氏は党内でグループを率いているわけではなく、後見人となる有力者もあまり見当たらない。

 ただ、「菅首相のままでは衆院選は戦えない」と公言している若手・中堅の支持を集めることは十分あり得るだろう。