海上自衛隊とオーストラリア海軍の合同訓練。「しまかぜ」(手前)と「アランタ」(2020年11月12日、出所:海上自衛隊)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家)

 10月19日、岸信夫防衛大臣とオーストラリアのリンダ・レイノルズ国防大臣が共同声明で、自衛隊法の“武器等防護”条文を根拠として、自衛隊がオーストラリア軍の警護を行うための調整を始めると発表しました。今まで“武器等防護”を根拠として自衛隊が警護を行うことにしていたのは、日米同盟を結ぶ米軍に対してだけでした。それをオーストラリア軍に拡大するというのです。

 前編(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63275)では、自衛隊法における“武器等防護”の条文がなぜ生まれたのか、どのように防護の対象を拡大してきたのかを解説しました。

 武器等防護の対象にオーストラリア軍が加えられることになり、今後はさらにインド軍などにも拡大される可能性も出てきています。後編では、防護の対象が広げられるとどんな問題が起こり得るのかを見ていきます。

武器等防護は「警察としての活動」だった

 米軍に対しては、日米同盟がありますが、他の国とは同盟関係にありません。それにもかかわらず、自衛隊がオーストラリア軍(将来的にはインド軍なども可能性があります)を防護することに問題はないのでしょうか? 10月20日に行われた記者会見では、その点を追求していた記者もいました。