(北村 淳:軍事社会学者)
筆者はかねてより本コラムで、尖閣諸島・魚釣島に気象観測施設と海難救助施設、それに奈良原岳山頂灯台から構成される「魚釣島測候所」を設置し、民間人を含んだ測候所要員を常駐させるというアイデアを、尖閣防衛の自助努力の一環として提示している。
実は20年近くも前にアメリカ海軍情報将校たちがその種の策を日本側に提案していたという事情を、複数の米海軍情報将校(退役)から聞かされた。
20年前ならば・・・
彼らは「20年前ならば、東シナ海における中国海軍力も航空戦力も、自衛隊と極東米軍にとってものの数ではなかった。そのため、日本政府が魚釣島に測候施設のような半永久施設を設置しても、中国政府は軍事的な動きを見せることはなかったであろう。また国際社会の多くから非難を被るような、経済的反撃のレベルも低かったであろう」と愚痴をこぼしている。
そして、東シナ海情勢に精通している米海軍関係者や米海兵隊関係者たちによると、「現在においても日本政府は万難を排してこの種の自助努力を実施する必要がある。だが日本政府がそうした努力を実施すると、アメリカ政府は中国共産党によって“踏み絵”を突きつけられることになる」と危惧している。