自分の意思と関係なく感情に流されることを「感情失禁(emotional incontinence)」というが、前頭葉機能が制御不能となり感情変化を抑えることができなくなることがその要因である。

 恋愛の情欲に火がつけばそれを押しとどめコントロールするには精神的にも、肉体的にも、たいへんな忍耐と苦労を強いられる。

 そもそも、私たち人間は、なぜ性的存在であり、なぜ誰しもがセックスに対して強い関心を抱き続けるのか。

 それは快感ホルモンであるドーパミンが分泌された時の得がたい幸福感、恍惚状態に対する執着によるからである。

 性欲を起動させるスイッチは脳にある。

 性的な快感は報酬系(報酬に対するモチベーション、幸福感、エクスタシー)を司る脳幹から始まり、視床下部、扁桃体など 大脳辺縁系を通り、大脳皮質の前頭葉へ達する神経回路のグループA10神経が関わる。

 オーガズムは脳の中で起こるが、そのとき報酬系は活性化され、結果、筋肉の収縮や射精などの身体的反応が起こる。

 人間の性交は理想的にいえば愛情を伴った者同士で行われるものだが、実際は、特に愛情を伴うことがなくとも、身体の特定の箇所に対する刺激だけでオーガズムは得られる。

 そのオーガズムへの執着が巷に横行する不倫を撲滅させることもなく、また接待を伴う夜のサービス産業の繁栄を担っているのだ。

 人間以外の動物は、メスが妊娠可能な時期にしか性衝動が起きず、性行為もしない。

 また、性交中、雄も雌への挿入時間は短く、行為を楽しむより、いかに多くの雌と交わるか。雌は強い雄の子孫を残すかにエネルギーは注がれる。