マグダラのマリアを神殿娼婦とする説がある。娼婦はかつて神聖な存在であった

 学術用語で「プレゼンテーション」という言葉がある。

「プレゼンテーション」とは霊長類の雌が餌をもらったお礼に、あるいは相手の攻撃をかわすため、性的サービスを提供することをも意味し、動物学の研究者たちは、いくつかの霊長類の中で売春行為がみられることを確認している。

 プレゼンテーションの語源は英語の「present(プレゼント)」で、動詞としては「示す」「進呈する」という意味がある。

 売春行為=悪い行為、という概念が、現代社会の先進国の中に蔓延っている。

 だが、東南アジアなどの発展途上国の田舎や、地方の少数民族の間では女衒に売られた娘が、都会で客をとりながら稼いだお金で、実家に冷蔵庫やテレビを買ってくれた、という話は親孝行の証といった美談で語られる現実は今でもあり、かつての日本においても同様の話は存在する。

「性」を売ることは人類最古の職業の一つであり、日本でも万葉集の時代から売春は行われ、遊女と呼ばれる女性が存在した。

 遊女は快楽の対象であり、『万葉集』には遊行女婦として登場し、彼女たちは、品良く、教養もあり歌舞に優れた美しい女性であったと記されている。

 キリスト教は売春や婚姻生活以外の性交渉を禁止したが、操を破るといった話が罪悪と強く認識されるようになったのは、日本では最近のことである。

 古来、ほとんど全国の農村では、お盆の祭りで一堂に男女が同衾(雑魚寝)をして泊まり込み、乱交を行う風習があり、盆踊りは男女の出会いの場にとどまらず、既婚者の肉体関係をもつ場をも提供していた。

 時代は遡り、紀元前3500年前の古代メソポタミアにおいて神殿娼婦は神聖な存在であった。