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(澁谷 司:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・アジア太平洋交流学会会長)

 昨2019年10月、「クレディ・スイス」の調査結果によれば、中国の富裕層であるミリオネア(100万米ドル<約1億457万円>以上の資産を持つ人)の数が米国の富裕層数を初めて上回ったという。同年半ばの時点で、世界のトップ10%にランクインした中国人は1億人で、米国の9900万人を上回る。果たして、この数字は本当なのだろうか。

中国人の所得分布の実態

 今年(2020年)5月、全人代閉幕後、李克強首相が月収(税金・社会保険料等を支払った後の可処分所得。いわゆる手取り。以下、同様)1000元(約1万5650円)で暮らす人々が6億人いると暴露し、世界を驚かせた。

 その元になった資料とは、昨年、万海遠・孟凡強『月収1000元にも満たない6億人はどこにいるのか』(財新網。以下、『研究』と呼ぶ)である。李首相の指摘だが、正確に言うと、収入ゼロから月収1090元(約1万7060円)までの人が5億9992万人存在する。これは、中国全人口(以下、全人口)の42.85%を占める。

【絶対貧困層・最下層】

 さて、まず、世界的基準である「絶対貧困」層とは、1日1.9米ドル(約199円)未満、すなわち月収57米ドル(約5960円)未満の収入しかない人々を指す。これを中国に当て嵌めると、月収380元(約5950円)未満の人たちである。