そうこうしているうちに、世界に冠たる経済大国だった日本は、ずるずると不況に足を取られ、ついにはGDPで中国に追い抜かれるというバブル時代には想像できなかった事態に直面することになります。有効な対策を見いだせずにいた日本でしたが、民主党政権の厳しい時代を経て、2012年に第二次安倍政権が誕生して状況に変化が生まれました。過去に例を見なかった規模の異次元の金融緩和を実施し、株価を急激に上昇させたのです。投資の限界効率は利子率に一致する(ケインズ)ことを意識しての、ゼロ金利・マイナス金利政策です。先ほど触れた、「三本の矢」の一本目です。

 これにより表面的には日本経済は民主党政権時のいわゆる「六重苦」からは回復した部分もありますし、国民的な期待も高かったのですが、結局、アベノミクスによって日本経済の地力が強化されて、成長軌道に乗ったという実感を国民が得るほどの成果は上げられませんでした。

 こうした30年ほどの間の流れを振り返ると、マクロの経済的施策はほぼ打ち尽くした感があることの気が付きます。デマンド(需要)サイドの喚起もサプライ(供給)サイドの改革もやり、大規模な金融緩和もやりました。

いくら熱心に応援しても選手が優秀じゃないと試合には勝てない

 この状況を野球やサッカーに例えるなら、グラウンドでプレーする選手たちに応援席から「頑張れ」と大声援を送ったり、太鼓やブラスバンドで鼓舞したり、ダッグアウトに戻ってきた選手の汗を拭いてあげたりアイシングしてあげたりということはさんざんしてきたわけです。応援したりサポートしたりするのが政治や行政(役所の政策)であり、グラウンドでプレーするのは企業や個人です。

 そして、比喩的に言うのなら応援やサポートはもうやりつくしました。それでも思うような結果が出ないというのであれば、試合に勝つためには、結局グラウンドでプレーする選手が優れたプレーヤーに成長するか、あるいは優秀な選手を引っ張ってこなければなりません。それがチームの成長に繋がり、地力をつけることになります。つまりは、優秀な人材が日本にはもっと必要だということです。