大きなストーリーとしては、「規制改革をして、民間活動を活発にして経済を成長させていく」と考えているのでしょうが、これは効果が出るまで時間もかかるし、そもそも相当の数の規制を緩めていかないと本格的成長にはつながりません。コロナで傷んだ経済を迅速に回復させてくれるかと問われれば、これは「非常に難しい」と言わざるを得ない。少なくとも現時点で、「菅政権になって日本経済が成長していく」という雰囲気は見えてきていません。

金融政策も財政政策もやり尽くした日本

 ただこれは菅首相の力量不足というわけではありません。誰がやっても長期的に衰退している日本経済、日本の国力を回復させることは容易ではありません。

 これは1990年代に経済産業省の官僚になった私の体感でもありますが、日本の経済政策をここ30年くらいのスパンで見たときに、政策で経済を活性化させるのはなかなか困難な時代になっているように思います。

 私が役所に入省した90年代後半は、バブルが弾け、後から振り返れば失われた10年と呼ばれるような時代でした。この時代は、思い切った財政出動で景気を浮揚させようという政策が主流でした。そのために赤字国債も激増していきました。

 これは言い方を変えると、デマンドサイドを刺激、つまり需要を創出することによって経済を活性化させていこうというのが基本的な考え方でした。ところがご承知のように、これはなかなかうまく行きませんでした。

 それに対する反動という意味もあり、2000年に入らんとするあたりから、「過剰雇用や過剰設備、過剰債務をリストラして、即ちサプライサイドをきれいにして成長させるんだ」という考え方――「サプライサイド改革」と言われていました――が主流になり始めました。残念ながら、これも本質的に日本経済を成長させることはできませんでした。