大垣城(岐阜県)。天守を撮りたいのだけれど。本丸はせまい上に木が茂ってうっそうとしており、看板などもジャマ。こんなとき、どうする?  写真:西股 総生(以下同)

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

城のことはよく知らないのだけれど、ちょっと気になる。
どこをどう見たら面白いのか、よくわからない。
そんなはじめて城に興味を持った人や、もっとよく知りたい人へ、
城の見方、楽しさを伝える書籍『
1からわかる日本の城』。
専門用語や歴史の解説ばかりでない、見分けるコツが書かれた本は、「今までになかった」と、城マニアからも注目されています。
今回はその中から知っているようで知らない、城の話をご紹介します。

プロのような写真ではなく・・・

 城を歩くとき、カメラやスマホで写真を撮る人は多いと思います。撮った写真をSNSにアップして楽しむ人も、いますよね。でも、

「自分が実物を見たときの感動を、写真でうまく伝えられない」

「撮っても撮っても、樹木や藪ばかり写ってしまう」

 みたいな、悩みを抱えている人も、いるのではないでしょうか?

豊臣秀吉が小田原攻めのために築いた石垣山城(神奈川県)。枡形虎口を撮ろうとしたのだけれど、これでは山林の写真だ。

 そこで、世の中には「お城写真上達のコツ」みたいな講座や、雑誌・ムックの記事などがあります。でも、ぶっちゃけ書いちゃいますね。そうした講座や記事は、思ったほどあなたの参考にはならないでしょう。

 なぜなら、講師や執筆者がプロ──城写真の得意なプロ──写真家や編集者だからです。

 ふつうの城好きと、プロとの間には、決定的な違いがあります。

 まず第一に、当たり前ですが、腕──つまり技術が違います。プロの技術とは、単に手先の問題ではありません。写真の理論やカメラとレンズの仕組みなど、専門的に学んだ知識と、業界人こその情報と、豊富な経験に裏打ちされたものです。一般人には太刀打ちできません。

 第二に、これも当たり前ですが、使う機材が違います。1台1万円のコンデジと、50万円の高級カメラで、写りが同じなわけはないですよね。高級カメラには、高度な機能がたくさんついていて、プロはそれを使いこなします。とても太刀打ちできません。また、素人が知らないような、さまざまな小道具を持ち歩いて、使いこなしたりもします。

 第三に、もっとも決定的な要素として、写真を撮るための行動がまったく違います。プロは、よい写真を撮ることから逆算して行動を組み立て、そのためのスケジュールを組んでいます。

 以上の三つから成り立っているプロのノウハウを伝授されても、一般人には応用がききません。だって、われわれは観光旅行や家族旅行のついでに、城をパシャっと撮って歩くだけなのですから。技術や機材や行動原理がそもそも違っている、プロのノウハウは、参考にならないのです。

 そこで今回は、観光旅行や家族旅行のついでにパシャっと撮る城写真を、もうワンランクアップさせる、ちょっとしたコツをお話しします。というか、城写真ワンランクアップのための呪文5つのうちのひとつ、授けます。

 それは「切り取りの術」です。