(城郭・戦国史研究家:西股 総生)
なぜ、兵装転換にこだわったのか?
(前回より)ミッドウェイ海戦の経過をたどってくると、一つの疑問が脳裏をよぎる。なぜ日本軍は、兵装転換にこだわったのか? 魚雷でミッドウェイ島を攻撃しても効果がないことは、素人考えでもわかる。
ただ、雷撃機(魚雷を積んだ攻撃機)を後回しにしても、爆弾を積んだ爆撃機だけでも、先に発進させられなかったのだろうか? あるいは、陸用爆弾を積んだ攻撃隊を、そのまま米艦隊に差し向ければよかったのではないか? しかし、ことはそう簡単ではなかった。
まず押さえておきたいのが、飛行機の種類だ。この当時、空母の艦上で使っていたのは、艦上戦闘機、艦上爆撃機(艦爆)、艦上攻撃機(艦攻)の3種類。艦爆は急降下爆撃、艦攻は雷撃(魚雷攻撃)と水平爆撃を担当する。
次に爆弾の問題。敵の艦船を攻撃するとき使う徹甲弾は、甲板を貫いて内部で爆発することによって、船体に大きなダメージを与える。ただし、陸用爆弾とは信管の構造が違うから、徹甲弾を地上目標に落としても不発になってしまう。
日本艦隊としては、ミッドウェイ島にある滑走路を破壊したいのだが、徹甲弾ではこれが達成できない。逆に、陸用爆弾で軍艦を攻撃した場合、甲板上は破壊できても撃沈はむつかしい。米空母を撃沈できないのでは、作戦の目的が達成できないことになる。
いちばん問題なのは、艦攻の使い方だ。長大な魚雷を抱えて飛ぶ艦攻は、急降下爆撃機として作られている艦爆より、機体そのものが大きく重い。地上目標を攻撃する場合は、艦爆より大きな爆弾を搭載できるが、水平爆撃という使い方になる。