(北村 淳:軍事社会学者)
在日米軍を含むアジア太平洋地域を担当地域とするアメリカ軍の指揮を執るインド太平洋軍司令官、フィリップ・デイビッドソン海軍大将は、カナダ大西洋岸のハリファックスで開催された国際会議で、南シナ海において米太平洋艦隊が中心となって実施している「FONOP」(公海での自由通航原則維持のための作戦)の重要性を指摘した。
羅援将軍の怪気炎
南シナ海は莫大な金額にのぼる貿易航路帯となっており、同海域における公海航行自由原則の維持は、国際社会にとって死活的に重要な課題となっている。それにもかかわらず、中国が南沙人工島基地群の建設をはじめとして南シナ海の軍事的支配を進めており、同海域での公海航行自由原則を脅かしている──とデイビッドソン司令官はじめ米軍当局やトランプ政権はことあるごとに力説している。
このようなアメリカ側の主張に対して、当然のことながら中国側は強く反発する姿勢をとり続けている。
南シナ海の大半(「九段線」という不明瞭な境界線で囲んだ海域)を「中国の主権的領域」であると国内法で制定している中国当局は、「南シナ海は中国の主権維持と安全保障にとって極めて重要な海域であり、『公海での自由航行原則』を口実として中国の主権と安全を脅かそうとする勢力に対しては、自衛のために断固として対決する」との基本姿勢を繰り返し公言している。
とりわけ強硬論(暴論?)で有名な中国人民解放軍の羅援少将は、デイビッドソン大将の声明に先立って、「南シナ海情勢を不安定にしている要因はアメリカに他ならない。南シナ海からアメリカを追い出すには米空母を沈めてしまうに限る」と豪語していた。