(古是 三春:軍事評論家)
ロードショー公開中のロシア映画「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」が日本でもかなりの評判を呼んでいる。
かつて1960年代に制作されたソ連映画「ひばり」(邦題「鬼戦車T-34」)のストーリーを下敷きにしたリメイク作ではあるが、現代技術のCG、SFXを駆使した迫力とリアリティーのある画面づくりと娯楽演出面で、かつての社会主義時代の映画制作を超えた「楽しめる映画」に仕上げられているのが新作の特徴だろう。
本国ロシアでも800万人の観客を動員したという大ヒット作だが、ソ連の戦争ものを語る時、例えば日本における戦艦「大和」や「ゼロ戦」(零式艦上戦闘機)など「鉄板モノ」といえる人気アイテムにあたるのが、T-34戦車なのである。
近年、我が国にもロシア人が数多く観光やビジネスで訪れ、日本に長期滞在したり居住する人も増えている。老若男女を問わず、親しくなってきてから雑談の中で「自分は『テ・トリッツィーチティーリ』(T-34)を知っている」と話すと、たいていのロシア人は「なんで?」という顔をしたあと、喜んでくれる。
彼らロシア人、いや旧ソ連圏の人たちにとってT-34は、2700万人もの犠牲を払わねばならなかった「大祖国戦争」(第2次世界大戦における独ソ戦を旧ソ連圏ではこう呼ぶ)を勝利に導いた救国の兵器なのだ。