(姫田 小夏:ジャーナリスト)
上海の名だたる商業施設が空っぽになっている。実店舗がネット通販に客を奪われていると言われて久しいが、売り場には本当に客がいない。筆者は南京東路でまさにその光景を目の当たりにした。
上海の南京東路といえば、国内外から多くの観光客が訪れる中国有数の繁華街だ。全長1000メートルの歩行者天国には多くの有名店が軒を連ねる。来街者が1日100万人を超えることもあり、2018年は1億5000万人がここを訪れたと報じられた。
中国紙「労働報」(2019年9月12日)によれば、南京東路への来街者は地元上海人の割合が46%を占める。とくに若者が多く、「90后」と呼ばれる1990年代生まれを中心とした20代が6割以上を占めるという。
南京東路の西の顔は、80余年の歴史を誇る老舗デパート「第一百貨商業センター」(以下「第一百貨」)だ。上海市内の数々の流通業態を束ねる大型国有企業、百聯集団の中核を成す。2018年にそれまでの「第一百貨商店」から名前を改め、第一百貨商業センターとしてリニューアルオープンした。