映画「MIDWAY」のワンシーン(US版予告編より)

(北村 淳:軍事社会学者)

 今年(2019年)の12月8日で日本海軍(大日本帝国海軍)による真珠湾攻撃から78年目となる。その真珠湾攻撃から7カ月ほど後の1942年6月4日から7日(現地時間)にかけて、日本海軍機動部隊とアメリカ海軍空母任務部隊の間で壮烈な激戦が交わされた。ミッドウェイ海戦である。

映画「MIDWAY」への観客と評論家の評価

 この海戦に勝利を収めたアメリカ海軍は、戦力的にはいまだに劣勢ではあったものの、軍隊の根幹をなす士気が著しく高まり、太平洋戦域での戦争の潮流が変わるきっかけとなった。このようにアメリカ海軍、そしてアメリカにとっては永遠に語り継がれることになるミッドウェイ海戦を題材にしたアメリカ映画(?)「MIDWAY」が11月7日からアメリカ全域で上映されている。

「MIDWAY」の制作費はおよそ1億ドル強といわれているが、封切りから3週間ほど経った11月末時点でのチケット売り上げはおよそ1億380万ドルと制作費を突破した模様である。米国の映画評論サイトであるロッテン・トマトによると、一般客のスコア(11月末現在)は91%と好評なのに対して、評論家をはじめとする映画関係者のスコアは42%と不評である。

 一般客に好評なのは、圧倒的に優勢な日本海軍に対して勇敢に立ち向かった米海軍急降下爆撃隊が日本機動部隊の空母を全滅させる、という単純な愛国的ストーリーが受け入れられ評価された結果と言えよう。一方、映画関係者たちからは、歴史的出来事をどのように描いているか? という視点ではなく、出演者の演技や口跡(こうせき)、それに映画の構成など「映画学」的観点からの悪評が多いようだ。

これはアメリカ映画なのか?

 筆者は映画評論家ではないので、俳優の演技をはじめとする映画そのものに関する論評はできないが、ミッドウェイ海戦に関するこの映画の内容は、「中国が絡んでいるシーン」以外は、比較的史実に沿って(娯楽映画としてはであるが)描かれていると言える。

 筆者周辺のアメリカ海軍関係者たちも、ミッドウェイ海戦にいたる米側の動きや海戦そのものに関しては概ね筆者同様の感想を持っている。だが、やはり許せないのは「中国が絡んでいるシーン」の存在であると言っている。