11月27日、釜山で開かれた第1回「韓・メコン首脳会議」に出席した文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)

 曺国(チョ・グク)前法相のスキャンダルは「オープン戦」だったのかもしれない。韓国検察の刃がついに文在寅(ムン・ジェイン)大統領府を真っ向から狙い、「大統領府vs.検察」の、ともに退くことができない最終決戦がいよいよ始まろうとしている。

 現在、韓国検察は、曺国氏が大統領府の民情首席秘書官として勤務していた時期にあった2件の「職権乱用」の容疑を取り調べている。1つは「監察もみ消し事件」、もう1つは「選挙介入事件」だ。検察はこの2つの事件で、曺国の背後に控える大統領府の最高位層を狙っていると思われる。

 まず、監察もみ消し事件から説明しよう。

高官の疑惑をもみ消し

 事件は2018年12月に遡る。

 大統領府・民情首席室所属の特別監察班の元捜査官キム・テウ氏は、ユ・ジェス金融委員会金融政策局長(当時)の不正を見つけて監察を行ったが、曺国民情首席(当時)の指示で監察をもみ消されたと暴露した。

 これに対して当時、曺氏は国会に出席し、「(不正容疑に対する)根拠が弱いと判断した。ただ、捜査をしていく中で、不正情報とは関係のないささいな私的問題点が出てきたので、辞表をもらうことにした。(問題点は)プライバシーなので詳しいことは言えない」と述べ、キム氏の主張を否定した。

 だが今年2月、キム氏は曺氏をはじめとする関係者らを「職権乱用」の疑いで検察に告訴。その結果、11月27日、ユ・ジェス氏は金融業界から約5000万ウォン(約460万円)相当の賄賂を受け取ったなどの疑いで検察に逮捕されたのだ。当然、検察の次のターゲットは、この問題のもみ消しに動いたとされる曺国氏になる。