12月26日、逮捕状請求を審査する会に参加するため裁判所に出頭した際に、記者からの質問に応じる曺国氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)

 12月27日未明、韓国検察が裁判所に要請していた、曺国(チョ・グク)前法務長官の逮捕状発布が裁判所によって棄却された。これで、相次ぐ権力型スキャンダルで検察捜査に追われていた文在寅(ムン・ジェイン)大統領府はひとまず、胸をなでおろすこととなった。

曺国氏が証拠隠滅を指示した、との情報も

 これに先立つ23日、検察は「ユ・ジェス事件」と関連し、曺国氏に対する逮捕状を請求していた。ユ・ジェス事件とは、2018年大統領府の高位公職者の査定機関である民情首席室が、ユ・ジェス金融委員会金融政策局長(当時)の不正情報をつかみ、監察に着手して有力な証拠を多数確保したが、突然ユ氏に対する調査を中止し、ユ氏の不正をもみ消したという疑惑だ。

 検察は、ユ氏の不正に対する調査中止に、文在寅政権の核心人物たちからの圧力があったという情況を把握し、調査中断の最終決定を下した曺国元民情首席について「職権乱用」容疑を適用して逮捕状を裁判所に請求したのだ。

「職権乱用」とは、公務員が職権を乱用して相手にとって義務無きことを行わせたり、権利行使を妨害したりする行為で、5年以下の懲役に処される重罪である。かつて朴槿恵(パク・クネ)政権の関係者らに対する「積弊捜査」の嵐の中、禹柄宇(ウ・ビョンウ)民情首席、金淇春(キム・ギチュン)秘書室長、趙允旋(チョ・ユンソン)文化体育観光部長官、梁承泰(ヤン・スンテ)最高裁長官などに適用された罪名がまさにこの職権乱用だった。

 特に、曺氏と同じく大統領府民情首席だった禹氏は崔順実(チェ・スンシル)氏の不正を調査しなかったという理由で一審で懲役2年6月の実刑判決を受けた。当時、裁判部は判決文で「高級公職者の不正などが確認されれば、監察に着手した後、適切な措置を取る義務がある」と民情首席の職務範囲を明記している。