ミッドウェイ海戦で日本軍機の猛攻を受ける空母ヨークタウン。日本艦隊はヨークタウンと引き換えに、主力空母4隻を一挙に失った。写真:AP/アフロ

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

太平洋戦争のターニングポイント

 ローランド・エメリッヒ監督の新作映画『ミッドウェイ』で話題になっているミッドウェイ海戦。1941年(昭和16)12月の真珠湾奇襲以来、連戦連勝をつづけてきた日本海軍は、翌42年(昭和17)6月のミッドウェイ海戦で、主力空母4隻を一挙に失う惨敗を喫する。これが、太平洋の戦いにおけるターニングポイントとなった。

 ミッドウェイ海戦では、戦力的には日本軍が優勢だったものの、連戦連勝ゆえの油断や作戦ミスに、さまざまな偶発的要素が重なって、きわめてドラマチックな戦いが展開した。

 なかでも、決定的要因となったのが、映画にも描かれていた日本艦隊の〝兵装転換〟である。今回は、この兵装転換をとおして、決戦の現場における判断の妥当性について考えてみよう。

 ミッドウェイ海戦は、日本軍が、米軍の空母戦力を撃滅しようと企てたことから起きた戦いだ。ミッドウェイ島を攻撃することによって、アメリカの空母部隊をおびきだし、一気に叩く、というのが日本側の作戦である。ハワイの西にあるミッドウェイ島が攻略されれば、日本軍にハワイ攻撃の足がかりを与えてしまうため、米軍としては見過ごせなくなるからだ。

 日本側は、この作戦に主力空母4隻を投入した。また空母部隊とは別に、ミッドウェイ島を攻略するための陸軍部隊と、これを援護するための艦隊とを進発させていた。

 ところが、米側では暗号解読によって、事前に日本側の作戦計画を察知しており、逆に空母部隊を待機させて、日本艦隊を待ち受けることとなった。とはいえ、米艦隊の空母は3隻。パイロットの練度なども含めると、戦力的には日本艦隊の方が優勢といえた。