(城郭・戦国史研究家:西股 総生)
城のことはよく知らないのだけれど、ちょっと気になる。
どこをどう見たら面白いのか、よくわからない。
そんなはじめて城に興味を持った人や、もっとよく知りたい人へ、
城の見方、楽しさを伝える書籍『1からわかる日本の城』。
専門用語や歴史の解説ばかりでない、見分けるコツが書かれた本は、「今までになかった」と、城マニアからも注目されています。
今回はその中から知っているようで知らない、城の話をご紹介します。
天守ばかりが城じゃない
世の中のほとんどの人は、お城=天守だと思っています。なので、「お城」がコンクリ製だとわかると、「なーんだ、本物じゃないのか」と、そそくさと帰ってしまいます。
でも、復元天守や復興天守のある城には、石垣や堀も残っています。櫓や門の本物が残っている場合だってあります。天守がコンクリ製でも、それらは間違いなく本物です。築かれてから数百年の風雪に耐えて、いま、あなたの目の前にあるのです。
コンクリ天守を見て、つまらなさそうに帰って行く観光客の皆さんは、本物の城を見る楽しみを自分で捨てているようなものです。あー、もったいない! コンクリ天守だって、本物の石垣や堀に囲まれて建っているからこそ、城としてのオーラを発するのです。
数百年の風雪に耐えてきた、本物に出会う楽しみ。本物と向き合う楽しみ──それこそが、城を歩く楽しみの、いちばん大切なところではないでしょうか。