遠江小山城(静岡県)の模擬天守。本来は天守のない戦国時代の城に天守風の資料館を建ててしまった例。近くで見ると、コンクリ感が出てしまっている。 写真/西股 総生(以下同)

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

城のことはよく知らないのだけれど、ちょっと気になる。
どこをどう見たら面白いのか、よくわからない。
そんなはじめて城に興味を持った人や、もっとよく知りたい人へ、
城の見方、楽しさを伝える書籍『1からわかる日本の城』。
専門用語や歴史の解説ばかりでない、見分けるコツが書かれた本は、「今までになかった」と、城マニアからも注目されています。
今回はその中から知っているようで知らない、城の話をご紹介します。

天守ばかりが城じゃない

 世の中のほとんどの人は、お城=天守だと思っています。なので、「お城」がコンクリ製だとわかると、「なーんだ、本物じゃないのか」と、そそくさと帰ってしまいます。

 でも、復元天守や復興天守のある城には、石垣や堀も残っています。櫓や門の本物が残っている場合だってあります。天守がコンクリ製でも、それらは間違いなく本物です。築かれてから数百年の風雪に耐えて、いま、あなたの目の前にあるのです。

 コンクリ天守を見て、つまらなさそうに帰って行く観光客の皆さんは、本物の城を見る楽しみを自分で捨てているようなものです。あー、もったいない! コンクリ天守だって、本物の石垣や堀に囲まれて建っているからこそ、城としてのオーラを発するのです。

遠江小山城に残る三重の空堀。模擬天守の目立つ城だが、土塁や空堀がよく残っていて、複雑な虎口の縄張りなど土の城好きには必見なのだ。

 数百年の風雪に耐えてきた、本物に出会う楽しみ。本物と向き合う楽しみ──それこそが、城を歩く楽しみの、いちばん大切なところではないでしょうか。