こうした理論や技術の研究・開発は当然のことながら大学などの研究室で生まれ、国家の安全のためには必要欠くべからざるものとなってきた。

 防衛省も大学等で研究・開発された技術を取り込む必要性が高くなり、2015年度から「安全保障技術研究推進制度」を創設し、大学等の研究予算が減少するのとは対照的に多大の予算規模(100億円台)で参加する大学を募集するようにした。

 それを忌避すべく学術会議が敏感に反応したのが、2017年の「軍事的安全保障研究に関する声明」で、1950年代からの2つの声明を継承するというものであった。

 軍事にかかわる研究に携わらなければ、象牙の塔に閉じこもって静謐な環境で研究できると思うのは意識の倒錯である。

 ソ連時代の抑圧に勝るとも劣らない中国の台頭にあって、「平和」を保障する「軍事」の研究を忌避するのは時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ない。

 そもそも2017年の声明は日本学術会議の総意ではない。

 いまの時代は軍事研究を排除できないのではないかという懸念が会員から上がっていたが、総会の紛糾を恐れたわずか十数人の幹事会が一方的に「声明継承」を決めてしまったからである。

争点化したい左派マスコミ

 読売新聞は「学問の自由 侵害せず」「前例主義 打破する」(6日)、「過去には廃止論 閉鎖性に懸念も」(8日)などと報じ、産経新聞は「人事を機に抜本改革せよ」(3日)、「前例踏襲に疑問」「学問の自由と無関係」(6日)などと報じた。

 両紙は6人排除の丁寧な説明は求めているが、首相の発言や学術会議の問題点などの事実報道に徹し、肯定した紙面構成となっている。

 中でも3日付「産経抄」は「任命権者である菅義偉首相が任命権を行使して、何が悪いか。(中略)左派マスコミと主流派野党の議論は逆立ちしている」と述べ、「推薦通りの人事が続き、任命権が形骸化していたことに問題はないか」「『縦割りと既得権益とあしき前例』の打破を掲げる菅内閣が、そこにメスを入れて何の不思議があろう」としている。

 これに対して、朝日新聞は「説明なし 学者除外」「学問の自由の侵害」「法の趣旨を曲げた」(2日)と報じた。この時点で早くも事実の報道というよりも戦闘モードである。

 3日以降は連日1面トップで扱い、任命されなかった数人にヒアリングして「学問の自由 菅政権の影」「戦争協力反省し設立」「政治と学問の関係脅かす」「憲法上疑義」など、多くの紙面を毎日使って報道している。

 国会審議を踏まえた8日付は「政府説明あいまい」「〝解釈は一貫″矛盾したまま」と、読者には否定的に伝わる工夫を凝らし争点化を狙っていることが明瞭である。