腸内細菌はメンタルの安定にも影響
(2)免疫の発達
腸内細菌は免疫系の発達に重要な役割を担っていて、リンパ球や免疫グロブリンのコントロールに関わっています。
(3)ビタミンの産生
腸内細菌はビタミンB1、B2、B6、B12、K、ニコチン酸、葉酸を産生します。
(4)メンタルへの影響
腸内細菌は、セロトニンやγ-アミノ酪酸(GABA)といった神経伝達物質を産生します。いずれも、気持ちを安定させる作用を持っている、非常に大切な物質です。
腸内細菌とメンタルの関係については、興味深い報告がいくつもあります。例えば、腸内細菌を持たない無菌マウスは、普通のマウスに比べて不安を示す行動が多い。しかし、無菌マウスに腸内細菌を移植してあげると、不安を示す行動が少なくなると報告されています(1)。あくまでマウスの研究ではありますが、腸内細菌がメンタルの安定に関わっていることを示唆する、非常に興味深い結果です。
第16回、第17回では、精神的なストレスによって、下痢や便秘を繰り返す「過敏性腸症候群」を起こすことがあると解説しました。これはいわばストレス(脳)→腸という方向の関係です。しかしマウスの研究が示しているのは、腸→脳という方向の関係です。つまり脳と腸は相互に影響を与えあっているということになります。これを「脳腸相関」と呼びます。
私たちは、自分の「気持ち」や「心」は脳だけで形作られていると思いがちですが、実はそうではなく、腸、しかも腸内細菌という「自分以外の存在」による影響も無視できないのです。自分のアイデンティティーが、揺らぐような気にもなりませんか。また、「気持ち」や「心」といったものが、案外ちょっとしたさじ加減で変わりうるものなのだ、とも思います。