善玉菌の栄養素は食物繊維
ではそんな腸内細菌は、どんな働きをしているのでしょうか。これが実に多岐にわたっているのです。
(1)食物繊維の発酵とエネルギー産生
腸内細菌は約1000種類もあり、きわめて多様ですが、便宜上大きく「善玉菌」と「悪玉菌」、そしてそのどちらでもない「中間の菌」に分けられます。悪玉菌もゼロにしなくてはいけない、というわけではないようで、善玉菌と悪玉菌のバランスが重要と考えられています。
ちなみに、腸の粘膜の総面積は決まっているので、善玉菌と悪玉菌は陣取り合戦をしているようなものです。善玉が増えれば悪玉が減り、悪玉が増えれば善玉が減ります。オセロの盤面のようなイメージです。
善玉菌の主な栄養源は食物繊維であり、悪玉菌の場合は糖類、脂肪、タンパク、アルコールです。ですので、善玉菌を増やそうとするならば、食物繊維をしっかり摂ることが重要なのです。
なぜ善玉菌が食物繊維を栄養分とするのでしょうか。これについては、実は論理関係が反対で、ヒトが食物繊維を自力で消化吸収することができないため、食物繊維を発酵できる細菌を進化の過程で一緒に暮らすパートナーとして選んだのです。ヒトは野菜などに含まれる食物繊維を腸内細菌に発酵してもらい、なおかつその結果産生される酢酸などをエネルギー源として利用しています。これが腸内細菌の大事な働きの一つです。
ですから、ヒトの食物繊維の摂取量が少なくなれば、腸内細菌、特に善玉菌は栄養不足になって活性が低くなり、代わりに悪玉菌がのさばり始めることになります。
結局、私たちは自分の身体のことだけ考えればいいのではなく、腸内細菌という、実は非常に影響力の大きい「同居人」のことまで考えて生活習慣を整える必要があるのです。