腸内細菌のバランス多様な病気の原因

 さて、以上のように、腸内細菌の働きは非常に多岐にわたっています。そして、その結果、腸内細菌のバランスの乱れは、様々な病気の遠因になると考えられています。例えば、第16回第17回で解説した過敏性腸症候群(IBS)を始め、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肥満、糖尿病、動脈硬化、関節リウマチ、喘息、多発性硬化症、ギランバレー症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症スペクトラム、うつ病・・・などの発症に関与していると報告されています。

 ご覧の通りきわめて多彩で、脈絡がないと言ってもいいほどです。おそらく、細かく調べていけば、まだまだ関連する病気は増えるのだと思います。ひとたび腸内細菌に問題が起きれば、全身のどこにひずみが生じてもおかしくない、ということを示しているのでしょう。

 もちろん、これらの病気において、「腸内細菌だけが原因」であるという訳ではありません。しかし、これらの病気の患者では、腸内細菌のバランスの変化や、多様性の減少が観測されており、病気に関連しているということはまず間違いないでしょう。

 さて、以上のように、腸内細菌は、私たちの体と切っても切れない関係にあり、重要な同居人でもあります。そんな腸内細菌をいい状態に保っておくためには、どうすればいいのでしょうか。日々の生活の中でマイルドに行っていくものから、耳を疑うような方法まであります。次回、詳しく解説いたします。

【参考文献】

(1) Nishino R et al. Commensal microbiota modulate murine behaviors in a strictly contamination-free environment confirmed by culture-based methods. Neurogastroenterol Motil. 2013;25:521-8.

※著者の近藤慎太郎氏が新刊『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』を出版しました。「ちょっと忙しかったし」「まあ、まだ元気だし」──。こんな言い訳を自分にしつつ、健康診断のC判定やD判定をほったらかしていませんか。でも、ほんとに怖いんですよ、そのままにしていると。「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」「尿路結石」……。さらに、こうした病気になった人が、「脳卒中」や「認知症」、「心筋梗塞」を起こし、“要介護状態"になることも少なくありません。本書はこうした病気が起こるメカニズムと症状、そして発症を予防する食生活や運動について、エビデンス(科学的な根拠)を用いながら、現代の医学で分かっていることをマンガも交えて丁寧に解説しています。