留学先の人気はアメリカからイギリスへ
これまで中国人留学生は、アメリカの大学の国際的な評価の高さや中国国内での英語教育の重要性、さらに将来的な永住権の習得を考慮したうえで、アメリカを一番の留学目標と考えていました。中国外交部が発表した数字によると、2020年7月の段階でアメリカに41万人、カナダに23万人、イギリスに22万人の中国人学生が留学している状況です。
ところが昨今の国際情勢の変化を踏まえて状況が大きく変わりつつあります。新型コロナウイルスの感染がアメリカ現地で継続しているという安全上の問題に加えて、7月以降にアメリカ国内における留学生のビザの発行停止が取りざたされるなど不安材料が尽きません。
アメリカ国内で留学生のビザが取り消され国外退去を迫られるという可能性は、アメリカ国内の各大学による抗議活動もあり、撤回されつつあります(「アメリカ政府、留学生のビザ規制方針を撤回 オンライン授業でも滞在可能に」BBC NEWS、https://www.bbc.com/japanese/53413346)。しかし留学先としてのアメリカは大きく揺らぐことなりました。
EIC启徳教育集団(Education International Cooperation Group)は、現在の中国人留学生の留学志向について、学生と保護者に対して行った調査の結果を7月に公開しました。同社は中国国内で20年以上留学支援事業や留学コンサルタント業務を行っている企業です。
2019年から留学先としてアメリカの人気が低下しつつありましたが、2020年の調査では、29%に上昇したイギリス(2019年は20%)が希望先のトップになりました。
では現在、中国国内での留学熱はどのようになっているでしょうか。同じ調査で、留学計画がどのようになっているかも調べています。
上記調査によると、多少の遅れはあるものの、全体の半数以上は留学の準備を現在も進めており、今後も中国からの留学生が世界での多数派を占めるのは間違いないでしょう。
最大の留学受け入れ国であったアメリカの人気が低下することで、多くの中国人留学生が他国での留学を指向することが、予想されます。各国および各大学の対応が今後の中国人留学生の人数を大きく左右するでしょう。