連載「ニューノーマル時代の大学」の第7回。はたしてコロナ禍の大学のリモート授業においても日本はガラパゴスなのか? 米英の大学人に専修大学商学部の渡邊隆彦准教授が現地のリアルな実情を訊く。
「学費を返せ!」
コロナ禍によりキャンパスが閉鎖され、リモート授業に移行したのは日本だけではありません。アメリカでは学費返還を求める集団訴訟が激増しているといいます。対面授業からリモート授業への切り替えに際してどのような問題が起こったのか、そして学生は何に不満を感じているのか――今回は、アメリカとイギリスの実情を、ニューヨーク大学の小出昌平氏、ロンドン大学の成田かりん氏に伺い、浮き彫りになった日本の大学の課題を相対的に捉えなおしてみたいと思います。
・小出昌平:ニューヨーク大学医学部生物化学分子薬理学科教授。パールムターがんセンターのコアメンバーでもある。
・成田かりん:ロンドン大学クイーン・メリー校政治学博士後期課程・指導助手。
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渡邊 日本の大学は、5月の連休前後からリモート授業で春学期が始まり、夏休みに入った今も基本的にロックダウン状態を継続しています。企業はテレワークを併用していますが満員電車が復活し、小中高も再開し、おまけにGoToキャンペーンで国内旅行が「奨励」されているにもかかわらず、大学だけが門を閉ざしている状況です。大学は大人数での講義が多く、また大学生は行動範囲が広い――クラスター発生リスクが高いということでそのような判断となっているのですが、アメリカやイギリスの大学はどういった状況なのでしょうか?
小出 最初におことわりしておかなければなりませんが、アメリカでは州によって対応が相当異なりますので、私がお話しできるのはニューヨーク州の大学についてだけです。
成田 イギリスも同様で、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで対応が違っています。私は、イングランドの大学のことをお話しします。