各国の留学生対応の現状
アメリカ
移民局(ICE)が7月14日に入国に関する新政策を告知しました。2020年秋から始まる新学期すべての授業がオンラインとなった留学生を国外退去させる、という方針です(後に撤回)。7月24日には、新学期においてオンライン授業のみを受講している留学生は、アメリカ入国を制限するという方針が発表されました(CBS NEWS、https://www.cbsnews.com/news/ice-bans-new-international-students-enrolled-in-online-only-classes-from-entering-us-2020-07-24/)。
加えて中国国内のアメリカ領事館が閉鎖されたこともあり、アメリカ留学ビザ申請業務についても影響がみられます。
イギリス
9月10日、イギリス国内では通常通りの新学期を開始しました。イギリス国内に滞在する留学生、留学を予定している学生に対するビザの発給および支援政策は通年通り継続されています。
また卒業後の留学生に対してイギリス国内への滞在と就労を許可する制度(Post-study Work Visa)の延長を表明しており、優秀な留学生の定住支援や人材活用に積極的な姿勢を見せています。中国国内にあるイギリス領事館も、通常通りのビザ申請業務を再開しています(THE PIE NEWS、https://thepienews.com/news/uk-confirms-post-study-work-stands-if-onshore-by-april-21/)。
オーストラリア
現在も入国にあたっての各種制限が設けられていますが、留学生の受け入れに関しては支援政策を発表しています。留学ビザの申請と各種審査は継続されており、入国制限が緩和された際には、学生の即時入国が可能とされています。
加えてオーストラリアにいない学生や戻れない学生に向けて、ビザの申請費用の無料化や、卒業後に発行されるビジネスビザの発行が簡易化されるなどの政策が、政府から示されています(https://covid19.homeaffairs.gov.au/student-visa)。
カナダ
緊急の必要性がある留学生やオンラインでの講義が不可能な学生だけが、現在入国を認められており、多くの留学生はカナダへまだ入国が難しい状況です(https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/coronavirus-covid19/students.html)。
各国とも、中国人留学生に向けて特定の政策は打ち出していません。しかしアメリカが留学生の受け入れに難色を占めつつある中、これまでアメリカ留学を目指してきた学生の多くは、環境が似ている英語圏を目指す傾向にあります。
日本留学の価値をいかに伝えるか
日本においても、毎年10万人前後の中国人留学生を受け入れています。全留学生に占める割合は徐々に低下しつつありますが、中国人留学生の総数は昨年までずっと増えていました。
中国を取り巻く留学事情が変化する中で、今後日本でどのように中国人留学生を引き付けるかは、今後の日本国内の留学事情に関わる課題といえます。
日本国内の外国人留学人材の調査や企業への受け入れコンサルティングなどを行う、日本国際化推進協会の田村一也事務局長(株式会社With World代表取締役)に、日本国内の留学生事情についてうかがいました。
「日本国内でも海外渡航制限は徐々に緩和されつつあり、春休みに母国に一時帰国した後、日本へ再入国できなくなっていた海外留学生が、日本へ戻ってこられるようになることが予想されます。日本国内で最も人数の多い中国人留学生も徐々に日本へ戻ってくるでしょう」
「直近で海外でのプロモーション活動や募集が止まっているため、留学生の一時的な減少は避けられませんが、その後は全体として大きく減少することはないでしょう。日本へ学びに来る留学生は、体験の機会を求める傾向が増しており、日本文化や日本の歴史を直接知り、体験することが留学動機になるといえます。このような日本文化というコンテンツの魅力がある中で、今後の留学希望者が大きく減ることはないと考えられます」