江戸城桜田門 撮影/西股 総生(以下同)

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

いまだからこそ見つかる城の歩き方

 城の入門書を読んだり、入門講座を聞いたりしていると、「城の世界は奥深い、さあ、その深い沼にどんどんハマりましょう」みたいな“圧”を感じること、ありませんか?

写真1:東京都調布市の深大寺城にて。城の“沼”にどっぷりとハマりつつある人たち。深大寺に城があるなんて、ほとんどの都民は知らない。

 でも、城を好きになったら、人生の中で城歩きを最優先にしなくてはいけない、とはかぎらないですよね。城には興味があるし、歩けば楽しいだろうけれど、自分の趣味の中では、城歩きは優先順位3番目か4番目くらいでいい、という人だって、たくさんいるのではないでしょうか。

 名城めぐりにこだわらず、数を競わず、沼にもハマらず、自分なりの城の楽しみ方があっても、よいと思います。まずは身近な城へ行き、その城をいろいろな方法で楽しんでみてはいかがでしょう? 

 たとえば、初めての城に行くのなら、案内板やパンフに出ている一般的なコースを歩いて、その城の全体的な雰囲気を楽しみます。2回目以降は、気になった箇所をじっくり観察してみたり、前回うっかり見落としたポイント、時間切れで回れなかったところをリベンジしてみます。

写真2:江戸城にて。石垣の隙間を埋めるのに、いい仕事してます。このような面白い積み方や、美しい石垣をさがしながら、一日中歩くのも楽しい。これなら、難しい知識も情報も不要。

 テーマを決めて歩くのも、楽しいですよ。今回は、櫓と門をじっくり観察してみよう。今日は一日、石垣に付き合ってみよう。ひたすら写真を撮り歩こう。ぶらあっと散策して本丸でお弁当を食べて、ぼーっとお茶をする、なんていうのも僕は好きです。

 数にこだわらずに城を歩くことで、意外な発見があったりします。季節や天候、時間によって、城が表情を変えるさまを楽しむこともできます。自由に全国の城めぐりができない、という状況を逆手に取るのです。

写真3:横浜市にある茅ヶ崎城。写っているのは大きな空堀ですぞ。市営地下鉄の駅から徒歩5分で、この空堀に出会えるのはうれしい。

 いま僕は、「withコロナ時代の城歩き」というテーマで、お話をしています。でも、withコロナな時代ではなくても、名城めぐりや、たくさんの城へ行くことがむつかしい立場の人だって、いますよね。

 仕事の都合で、なかなか連休を取れない。家庭の事情で、何日も家を空けられない。お小遣いが限られているので、あまり遠くへは行けない。そうした事情があるのに、まずは全国の名城めぐりから、といわれても困ってしまいます。行った城の数が多いほどエライのだとしたら、いつまでたってもカーストの一番下。まるで、城を好きになってはいけないみたいです。

 そんなのは、おかしい。誰だって、いつだって、withコロナ時代だって、城に興味を持っていいはずです。要は、自分に合った城の歩き方、自分だけの楽しみ方を見つければよいのです。

写真4:茅ヶ崎城の本丸にて。公園になっているので、散歩を楽しむ人もいれば、ベンチで昼寝をしている人も。戦いのために築かれた城も、いまは平和なものである。

 そのためのヒント集として、このサイトで昨年10月から今年の7月まで連載した「教養として役立つ『日本の城』」を、1冊の本にまとめることにしました。

 え? 同じ内容を読むのなら、本を買うより無料サイトの方がいい? でしたら、どーんとオマケを付けましょう。記事にできなかった説明や、実際に城を楽しむためのノウハウなんかを、たっぷり追加します。

写真5:小田原城へ行ったら、イベントの準備で本丸はこの有り様。こんなとき、城をカッコよく写真に撮るにはどうする? みたいな話も、本には書こう。

 というわけで、がんばって原稿を書いていますので、もう少しお待ち下さいね。

●西股総生『はじめて読む日本の城』(仮)10月30日発売決定!

 JBpressで連載していた「教養として役立つ『日本の城』」に加筆を加えた書籍が発売となります。城のことはよく知らないのだけれど、ちょっと気になる。どこをどう見たら面白いのか、よくわからない。そんな、はじめて城に興味を持った人や、もっとよく知りたい人へ、城の面白さや、城歩きの楽しさをお伝えします。

・遠くの名城より近所の城が面白い
・「石垣」「堀」「櫓」を1日中眺める
・最強の戦闘施設としてみる「天守」
・何もない「城跡」は妄想で楽しむ
・専門家しか知らない城の撮り方…etc

発売日:10月30日(金) 発行:JBpress 発売:ワニブックス
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