(城郭・戦国史研究家:西股 総生)
いまだからこそ見つかる城の歩き方
城の入門書を読んだり、入門講座を聞いたりしていると、「城の世界は奥深い、さあ、その深い沼にどんどんハマりましょう」みたいな“圧”を感じること、ありませんか?
でも、城を好きになったら、人生の中で城歩きを最優先にしなくてはいけない、とはかぎらないですよね。城には興味があるし、歩けば楽しいだろうけれど、自分の趣味の中では、城歩きは優先順位3番目か4番目くらいでいい、という人だって、たくさんいるのではないでしょうか。
名城めぐりにこだわらず、数を競わず、沼にもハマらず、自分なりの城の楽しみ方があっても、よいと思います。まずは身近な城へ行き、その城をいろいろな方法で楽しんでみてはいかがでしょう?
たとえば、初めての城に行くのなら、案内板やパンフに出ている一般的なコースを歩いて、その城の全体的な雰囲気を楽しみます。2回目以降は、気になった箇所をじっくり観察してみたり、前回うっかり見落としたポイント、時間切れで回れなかったところをリベンジしてみます。
テーマを決めて歩くのも、楽しいですよ。今回は、櫓と門をじっくり観察してみよう。今日は一日、石垣に付き合ってみよう。ひたすら写真を撮り歩こう。ぶらあっと散策して本丸でお弁当を食べて、ぼーっとお茶をする、なんていうのも僕は好きです。
数にこだわらずに城を歩くことで、意外な発見があったりします。季節や天候、時間によって、城が表情を変えるさまを楽しむこともできます。自由に全国の城めぐりができない、という状況を逆手に取るのです。
いま僕は、「withコロナ時代の城歩き」というテーマで、お話をしています。でも、withコロナな時代ではなくても、名城めぐりや、たくさんの城へ行くことがむつかしい立場の人だって、いますよね。
仕事の都合で、なかなか連休を取れない。家庭の事情で、何日も家を空けられない。お小遣いが限られているので、あまり遠くへは行けない。そうした事情があるのに、まずは全国の名城めぐりから、といわれても困ってしまいます。行った城の数が多いほどエライのだとしたら、いつまでたってもカーストの一番下。まるで、城を好きになってはいけないみたいです。
そんなのは、おかしい。誰だって、いつだって、withコロナ時代だって、城に興味を持っていいはずです。要は、自分に合った城の歩き方、自分だけの楽しみ方を見つければよいのです。
そのためのヒント集として、このサイトで昨年10月から今年の7月まで連載した「教養として役立つ『日本の城』」を、1冊の本にまとめることにしました。
え? 同じ内容を読むのなら、本を買うより無料サイトの方がいい? でしたら、どーんとオマケを付けましょう。記事にできなかった説明や、実際に城を楽しむためのノウハウなんかを、たっぷり追加します。
というわけで、がんばって原稿を書いていますので、もう少しお待ち下さいね。
●西股総生『1からわかる日本の城』10月30日発売決定!
JBpressで連載していた「教養として役立つ『日本の城』」に加筆を加えた書籍が発売となります。城のことはよく知らないのだけれど、ちょっと気になる。どこをどう見たら面白いのか、よくわからない。そんなはじめて城に興味を持った人や、もっとよく知りたい人へ、城の面白さや、城歩きの楽しさをお伝えします。
・遠くの名城より近所の城が面白い
・「石垣」「堀」「櫓」を1日中眺める
・最強の戦闘施設としてみる「天守」
・何もない「城跡」は妄想で楽しむ
・専門家しか知らない城の撮り方…etc
発売日:10月30日(金) 発行:JBpress 発売:ワニブックス
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