(佐々 義子:NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)
私たちはもう「人工甘味料」や「合成保存料」という言葉を目にしなくなるかもしれない。
2020年5月25日、内閣府消費者委員会 第59回食品表示部会が開催され、着色料と甘味料、保存料について容器包装に記載する際には、「人工」「合成」という用語を削除することが、食品表示法に基づく食品表示基準に盛り込まれることになった。3月に公開された消費者庁の「食品添加表示に関する検討会報告書」を受けた議論が行われたもので、7月16日に官報告示される。
日本人は自然を愛する国民性がある。例えば、日本料理は素材のよさを生かし、五感に訴えるような演出を施すことなどが特徴として大切にされてきたが、このことと表裏一体のように「天然・自然は安全、人工・合成は危険」のような認識もついて回った。
このような認識による誤解の被害を最も大きく受けたひとつに、食品添加物があるのではないだろうか。保存料のおかげでライフラインが途絶えた被災地に食料を送ることができ、色素や香料の原料として大量に使われる生物資源を守ることにも貢献してきた。にもかかわらず、食品添加物は人の手で合成されたというプロセスのために嫌われ、安全でないような誤解を受けてきたのだ。
「2018年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」でも「無添加」と表示された食品を購入する人の半数以上は「安全で健康に良さそうだから」と回答しており、24.7%が「合成、人工という表示のある食品を避ける」と回答している。「人工」「合成」を避けることが安全らしいと認識されている構図が見えてくるアンケート結果である。
食品添加物に関わってきた方たちは、こういう状況をずっと、残念な思いで見つめてきたに違いない。それが、今回の食品表示基準の一部改正で挽回される。
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