私たちの食卓は、食品添加物と切っても切れない関係にある。

(佐々 義子:NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)

 2020年3月31日、消費者庁は食品添加物表示制度検討会の報告書を公開した*1

 食品添加物というと、「無添加」表示に代表されるように、「事業者に益をもたらす(日持ちを良くする、コスト削減など)目的で食品の加工に使われている必要ないのものではないか」「人間が長く摂取したら健康被害がでるのではないか」などの不安から、食品添加物は避けるのがよいと思っている人は少なくない。そういう認識は消費者団体に根強いと思われてきた。日本食品添加物協会が分かりやすいパンフレットを配布したり、食品添加物メーカー、栄養士らが気の長いリスコミュニケーションを行ってきたにもかかわらず、である。

 しかし、今回の報告書は、そのような予想を大きく裏切るものだといえる。「無添加」「不使用」表示を問題視する声が事業者だけでなく消費者団体からも上がったり、「人工甘味料」「合成着色料」という用語を食品添加物の表示から削除することへのパブリックコメントが求められたり(2020年5月16日まで募集*2)、風向きが変わってきている気がする。

 食のリスコミュニケーション、食品添加物をめぐる一般市民の科学リテラシーの視点から、本報告書を見てみたい。

*1https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_003/
*2https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080054

「天然」は安全で健康によいのか

 一般に、消費者という存在は、「天然の食品は安全で健康によい」、その逆で「『人工』『合成』とつくものは健康に良くない」と認識していると思われてきた。

 食品表示基準における甘味料の用語は「甘味料、人工甘味料、合成甘味料」であり、着色料は「着色料、合成着色料」、保存料は「保存料、合成保存料」となっている。一方、1989年の食品衛生法に基づく制度改正では、国際動向を踏まえて「食品添加物においては天然と化学的合成品とに差を設けない」となっている。

 今回、行われた消費者意向調査で、「人工」「合成」と書かれた食品添加物を避ける消費者が存在することが分かった。事業者団体のヒアリングから、「化学調味料」など定義が不明確な用語の使用が、消費者の食品添加物への理解に影響を与えているという意見があったという。

 そこで、消費者の誤認防止の観点から「人工」「合成」の用語の削除が、検討委員会委員の総意として認められた。現在、行われているパブリックコメントの論点のひとつが、「人工」「合成」の用語の削除となっている。反対する理由が挙げられなければ、「体によくない人工甘味料」「合成着色料」という言葉はなくなる。