イーストフードや乳化剤の「無添加」を謳う「強調表示」に対し、製パン業界から「自粛」が打ち出された。

 2019年3月26日、山崎製パンは「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示に関する当社の見解」を発表し、こうした表示の製品は、消費者にイーストフードや乳化剤は不要で、安全性に問題があるかのような誤解を与えるとの理由から、強調表示する企業に自粛を呼びかけた。あわせて、このような強調表示がされているパンから、イーストフードや乳化剤と同じ働きをする成分が検出されたというデータも発表した。

「自然・天然のものはよいが、人工のものはよくない」という消費者の情緒的な商品選択の傾向に対して、自らは声をあげにくい企業が見解を述べたことは、例をみない、興味深いできごとだと思い、筆者は6月に「『無添加』『不使用』に安易に飛びついてはいけない」という記事を寄稿した。

 これと相前後して、パン業界にも大きな動きが見られた。強調表示をめぐる“その後”を追った。

日本パン公正取引協議会「自粛」を発表

 7月18日、日本パン公正取引協議会は「『イーストフード、乳化剤不使用』などの強調表示の自粛に関するお知らせ」を発表し、自主基準を公開した。これに先立ち、6月20日、パン工業協会も同文のお知らせと自主基準を発表している。

 日本パン公正取引協議会は、消費者庁・公正取引委員会に認定された全国83業種の公正取引協議会のひとつ。これら協議会は、消費者が「安いから・・・、景品がついているから・・・」などの理由ではなく、自主的・合理的な商品選択ができるよう、業界が決めた自主ルールを運用し、その普及に努めるために活動している。

 同協議会は、日本パン工業会の21社と、全日本パン協同組合連合会のうち36社が会員となっている。また賛助会員にはイースト、製粉、マーガリン、パン・製菓機器などに関わる企業が名前を連ねている。会員企業は同協議会の会員として「包装食パンの表示に関する公正競争規約」を守り、また「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)に則って製品表示をすることになっている。