県をまたぐ移動制限緩和に関しては、本当に専門家から異論はなかったのだろうか。緊急事態宣言解除時に「人口10万人あたり0.5人」を求めた専門家たちが、この局面で誰一人異論を唱えなかったとしたら、むしろ不自然だと思う。また、本当に異論がなかったなら、そんな偏ったメンバー構成で大丈夫なのかとさえ思う(念のためだが、私自身、県をまたぐ移動制限緩和に全く反対ではない)。

 もし本当は異論があったなら、「・・・との異論があった。しかし、政府として・・・と判断し、移動制限緩和を決めた」と説明してもらえばいい。そのほうが、「みんな合意した」と上っ面の説明をされるより、よほど信頼できるし、リスクを正しく認識できる。

コロナ対策に「コンセンサス」は不要

 政府のコンセンサス尊重に毒されたのか、尾身会長からも「国民的コンセンサスを作る必要がある」との発言があった。検査戦略に関する提言(資料4-1)に関し、無症状のリスクの低い人たちに対する検査を巡ってだ。

(外部リンク:第1回分科会資料)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/corona1.pdf

 これもおかしな話だ。憲法改正でもあるまいし、国民的コンセンサスを形成する理由も手段もなかろう。

 尾身会長が留意事項として強調したのは、仮に1万人に100人の感染者がいるグループで一斉検査を行った場合、現在の検査精度では、

・感染者100人のうち30人は「陰性」と判定され(=偽陰性)、
・99人は感染していないにもかかわらず「陽性」と判定される(=偽陽性)、

 ことだ。

(出典)7月6日分科会資料
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 そんな検査なら、私はとても受ける気にならないし、感染者の3人に1人は見落とされるのだから「検査を受けた人たちと一緒なら安心」とも思わない。だが、それでも検査したい人や企業はあるのだろうし、そうした人たちは自費で検査を受けたらいい。

 ただし、その際、

1)医療関係者らに負担をかけない方式にすべきであり、
2)また、「感染していないのに隔離を求められるリスクがあること」、「陰性と判定されても感染している可能性があること」を十分注意喚起しておけばよいだけだと思う。

 別にコンセンサスは必要ない。政府が自らの責任で方針決定し、それを国民に説明し、必要な注意喚起などを徹底したらよいことだ。