もう一つ注目すべきは、権力とマスコミとの関係である。両者の間に緊張関係があってはじめて、民主主義が機能する。黒川氏の麻雀の相手は産経新聞の記者2名と朝日新聞の元記者1名である。取材者と取材対象との関係は難しい。

 私は、厚労大臣や参議院自民党政審会長など、政府や党の役職を経験したが、「舛添番」と呼ばれる番記者がマスコミ各社から取材に張り付いていた。彼らは、少しでも他社よりも早くスクープを入手しようとする。国会や役所や党本部のみならず、朝は6時頃から、夜は深夜まで私の自宅前で待っている。

 特定の記者と仲良くなると、全マスコミに対して公平な情報提供ができなくなる。それを私は巌に慎んだが、その代わりに記者懇談会をよく行った。オフレコの約束で、ある政策の背景などを解説する。少しでも正確な記事を書いてもらうためである。

権力者と癒着して情報を取る取材方法のままでよいのか

 ところが、オフレコのルールを破って、内容を週刊誌などに売る不届き者の記者がいたために、記者懇談会は途中で止めた。一部の記者が週刊誌でアルバイトをしていたのだが、「給料の安い新聞社の記者は気をつけたほうがよい」というアドバイスも貰ったことがある。

 賭け麻雀報道について、朝日新聞は「不要不急の外出を控えるよう呼び掛けられている状況下でもあり、極めて不適切な行為でおわびします」と謝罪した。産経新聞東京編集局長は、当社は「記事化された内容以外は取材源秘匿の原則に基づき、一切公表しておりません」とのみコメントしたが、要するに、麻雀は取材が目的だったということなのであろう。その後、紙面で謝罪するに至っている。

 何か一昔前の政治家と番記者の組み合わせを見ているような錯覚に陥る。いつまで旧態依然とした取材方法に固執しているのか。また、趣味の麻雀とはいえ、黒川氏のほうも記者をメンツに入れるべきではなかった。マスコミの取材方法もまた変わらねばならないだろう。

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