3月25日、都内で新たに41人の感染者が確認されたことを受けて記者会見する小池百合子都知事。「感染爆発の重大局面だ」として週末の外出自粛を都民に要請した(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 世界中に流行が拡大した新型コロナウイルスは、人類の様々な活動に大きな影響を及ぼしている。最大の問題は、このウイルスがまさに「新型」であって、その特性がすべて解明されたわけではなく、既成概念では捉えられないことである。

 たとえば、英米独仏などの耳鼻咽喉科の医師によると、新型コロナウイルス感染の兆候として、嗅覚の喪失を挙げている。ドイツでは、3人に2人以上にこの症状が出たという。これも、感染者を早く見つけるために大いに役に立つ。

悔やまれる最初の1カ月間の対応

 日本でも、阪神の藤浪晋太郎投手が嗅覚喪失の症状が出たため、検査したら陽性だったという。同僚の選手も陽性で、味覚喪失があったという。

 当初は、軽い風邪のようなもので、高齢者や基礎疾患のある者以外は、さほど恐れるには及ばないというのが、一般的な認識であった。最初に感染者が見つかった武漢での感染者の急激な増加については、中国の初動体制の遅れ、情報隠蔽体質が主たる原因とされたのである。

 つまり、これは中国の感染症であり、対岸の火事だと諸外国は考えていたのである。それは、ヨーロッパやアメリカのような遠隔地のみならず、日本や韓国のような近隣諸国でも同じであった。そこで、旧正月(春節)の前後から大量の中国人観光客が訪日したのである。その段階ですでに、多くの日本人が感染し、それに気づかないままだった可能性も捨てきれない。

 日本で最初の感染が判明したのは1月16日で、湖北省から帰国した中国人であった。しかし、その段階でも日本政府も日本国民も危機感を持たず、安倍政権が専門家会議を慌てて設置したのが2月14日である。それは、前日に初めて死者が出たからである。