様々な化学物質に囲まれている現代の生活においては、誰にでも化学物質過敏症が起こり得る(写真はイメージ)

「実は怖い『室内空気の汚れ』」の前編記事「長引く体調不良、部屋の空気のせいかもしれないでは、室内空気の汚れが、倦怠感や頭痛、メンタル不調など心身の健康に大きく影響すること、室内に発生するカビなどの微生物が有害な有機化合物、MVOC(Microbial Volatile Organic Compounds)をつくり出し、近年このMVOC由来のアレルギー性疾患やシックハウス症候群の患者が増えていることを、お伝えした。
 後編では、こうした空気の汚れに対して、どんな対策をしたらいいのかをレポートする。身の回りにあふれる化学物質との向き合い方、柔軟剤やシャンプーなど香りの強いものに触れると吐き気やアレルギー性症状を起こすと最近、注目されつつある「化学物質過敏症」についても解説していく。(新村直子:医療健康ジャーナリスト)

2時間に1回の換気が基本

 室内の空気を清浄に保つために、最も重要なのが部屋の換気だ。特に冬場は常に部屋を締め切っていて、気づいたら、1日中、一度も空気を入れ替えていなかったという人もいるかもしれない。しかし、環境化学物質の健康影響について研究を続けている東海大学医学部医学部長の坂部貢教授は、「室内の空気をクリーンに保つためには、窓を定期的に開けて換気するのが最も効果的。空気清浄機にも空気を入れ替える機能はないので、私は出勤したらすぐに、執務する部屋の窓を1センチぐらい常時、開けておくように心がけています」と話す。

 窓を開けて換気する回数の目安は、2時間に1回。シックハウス症候群対策として建築基準法が改正された際にも、一般住宅の換気回数の目安として「0.5回/時(2時間に1回)の換気」が義務付けられている。冷暖房効率とのトレードオフという面もあるものの、このぐらいの回数を目安に、窓を開けて風を通す習慣をつけていきたい。

 とはいえ、一般住宅の場合、クローゼット、トイレ、キッチンなどは特に締め切った状態が続いてしまいがち。こうした場所では、小型の扇風機などを設置して空気の流れをつくるようにするといい。2階などは、廊下をつなぐ両サイドの窓を開けて通気できるのが理想だが、構造上、窓が片方しかない場合も、換気扇などを活用して家全体の空気循環を良くしていこう。