動けない植物がとった「動物を利用する」繁殖戦略

生物進化を食べる(第9話)被子植物と果実篇

2019.12.27(Fri)大平 万里

 古生代末のペルム紀あたりになると、シダ植物に代わって「裸子植物」が登場する。裸子植物は、最初期の種子植物である。種子というのは、発芽のための栄養や胚がすべて揃っている「次世代へのタイムカプセル」のようなものだ。水分、温度、日照などの点で好適な条件が揃うまで何年も休眠状態でいられる。子孫をより確実に残すには非常に有効な仕様である。しかし、栄養があるわけだから、動物に狙われるのは避けられない。

 私たちが食物として認識する最も古いタイプの種子植物は、イチョウであろう。イチョウは、古生代末から現在に至るまでほぼ姿を変えておらず、「生きている化石」ともいわれる。私たちが食しているギンナンは、イチョウの種子の仁(じん)の部分である。

イチョウの葉とギンナン。

 ギンナンを大量に摂取しすぎると、けいれんなどの中毒症状を引き起こすことがある。ギンナンには、アミノ酸代謝に必須のビタミンB6に似た化合物が含まれており、体内のアミノ酸代謝が異常になってしまうのだ。あたかも「種子を食べられてたまるか」とイチョウが対策をたてているかのようだ。

 中生代に入ると、いわゆる「針葉樹」とよばれる裸子植物が大繁栄する。針葉樹もまた、動物との関係を拒絶する種が圧倒的に多い。実際、ヒトの食用になる針葉樹は、せいぜい「松の実」や「カヤの実」くらいだろう。

松の実。チョウセンゴヨウやイタリアカサマツなどの実が食用となる。

 裸子植物に限らず、種子は次世代につなぐ「命のバトン」であるから、そうそう食べられやすいようにはできてない。よって、ヒトが食料として扱っている種実類のほとんどは加熱を前提しており、生のまま食べると腹を下したり中毒症状を起こしたりするものが多い。

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