例えば、競合店舗に停まっている車の台数をカウントし売れ行きを把握、テーマパークや高速道路の渋滞状況、人や車の数や動きを可視化するなどして、未来予測に役立てる。
「目標は『リアルタイムの観測マップ』の実現です。個人的には中洲の複数のラーメン屋台の行列を見て、『ここは人が少ないな』と思ったらすぐに行きたい(笑)」(大西氏)
大西氏は、冬にスノーボードに行こうと近くの山をGoogleマップで見たら、夏山の写真が出てきたという。「Googleマップでは今欲しい情報が得られない」と感じた問題意識が、ビジネスのヒントに繋がった。
5~6年で「店」を閉めるつもりだった
そもそも、QPS研究所はどんな目的で立ち上げられたのか。きっかけは、八坂氏が九州大学で定年を迎えたことだった。
「宇宙関連プロジェクトを一緒にやってきた同い年の仲間3人が定年になり、やりたいことを続けたいと有限会社を立ち上げたんです」(八坂氏)
会社設立と前後して八坂氏は「あなたの技術を宇宙に持って行きませんか」と九州内を行脚。「我々は宇宙に関するこんなことをやっています。この部分が足りません。一緒にやりませんか?」と。
企業からは「でも、宇宙って大変でしょ」という反応が多かった。八坂氏はこう踏み込む。「いやいや、振動環境は自動車の方がよっぽど大変だし、車のボンネットの中は高温になりますよね。(宇宙と地上環境で)違うのは、真空と放射線です」と。「『それならできる』と反応がものすごくあったんです」。その数は約200社にのぼった。
こうして地場企業とQPS研究所とのモノづくりが始まった。2014年には小型衛星「QSAT-EOS」の打ち上げに成功、大学へ大型アンテナを納品、導電性テザーをJAXAと共同研究開発するなど、JAXAや大手企業、大学などと多数の実績を積み上げてきた。