また2010年代に入ってから幾度か回収騒ぎが起きた「リチウムイオン電池過熱・発火」などの問題も、こうした「有機導体」あるいは「有機電解質」が直接の原因になっています。

 初期には、発火などの危険がある金属リチウムを電極に用いたため実用化しなかった「リチウム2次電池」が、「リチウムイオン」をやり取りする画期的な電池になるには、インターカレーションという全く別の、本質的な物性が決定的な役割を果たしています。

「特定の結晶構造をもつ炭素材料」みたいな何も言わない表現でごまかすのは、極めて残念なことです。

 さらに、今回最年長の受賞者、ジョン・グッドイナフ教授(1922-、テキサス大学、97歳)は「2次電池の材料の発見者」に留まる人物ではなく、固体物理学者・無機化学者として莫大な業績を残しています。

 なかでも最も知られる一つに、大阪大学総長も務められた固体物理学者で惜しくも先年亡くなられた金森順次郎先生との「超交換相互作用におけるグッドイナフ=金森の法則」 など、本質的な基礎科学業績があります。

 英オックスフォード大学無機化学研究所時代の留学生の一人、水島公一さんの業績が、リチウムイオン2次電池の実用化に決定的に寄与していることも報道されているかと思います。

 重要なのは自然の振る舞いのコアにどこまでどのようにアプローチできるか、であって、その虚心坦懐、謙虚なアプローチの結果として、吉野さんの実用化も成就したものと理解する必要があると思います。

 その内容については、続編に記したいと思います。

(つづく)