1937年、超大型飛行船「ヒンデンブルク号」の水素ガスが大爆発するとともに、時局は戦争に突入し、軍事技術としては利用不可能な、実に平和で弱っちい、のどかな飛行船技術は収束してしまいました。
今日でもアドバルーン的なものは目にしますが、グローバルなトランスポートの中核はおよそ担っていない。
水素は「原金属」で、反応すると大爆発してしまう。また水素はたった1個の陽子を原子核とする、最も簡単な元素、つまり最軽量の物質でもある。だから飛行船も浮かぶ・・・。
軽いのに高エネルギー、この観点から考えるとき、その次に軽い「究極の軽金属」がリチウムにほかなりません。
こういうことを、もっとこの機会にPRして、物質科学に興味を持つ中学高校生が増えることを念頭に、今回はこの前半部に紙幅を割いて2回に連載を分けています。
中学生高校生が習うサイエンス、また新聞で目にする事故のすぐ隣に、ノーベル賞を受ける本質的なヒントが常に潜んでいる。このことを強調せねばメディアではありません。
今年のノーベル物理学賞はビッグバンの直接的な観測的証拠である「宇宙背景輻射」を理論づけたジェームズ・ピーブルス教授(プリンストン大学名誉教授)に2分の1の評価で授与されました。
この「ビッグバン」で生まれたのがリチウム3という「最初の金属」でした。
リチウムは究極に軽い物質で、それより軽いのは「水素」と「ヘリウム」しかありません。水素は原発事故でも見た通り、高反応性を持ち、場合によると危険です。