米中の軍事的対決回避は困難

 外交や政治の動きもあるだろうが、軍事的に見れば米国の覇権に挑戦しようとしている中国の軍事的対決は、もはや不可避である。それは次の3つのことから言える。

●相互の覇権に対する強い意志

 中国は2017年の中国共産党大会で、中華民族を中心として人類運命共同体を構築すると宣言し、その裏づけとなる軍事戦略では2035年までに西太平洋以西の支配を明確にするなど、米国から覇権奪回の意志は強い。

 経済面でも一帯一路に代表される独自のシステムを構築して、新たな秩序を構築すると宣言している。

 一方、米国は最終的に中国共産党の存在を認めないと言う固い決意を持っている。その考え方は、超党派で米国議会が後押しをしているため、中国に対する対決の意思は揺るがない。

●第1列島線の価値

 中国にとって第1列島線は、中国の経済的核心地域(天津・北京、揚子江デルタ地域、珠海・広州地域)を守る外壁であると同時に、中国の海洋侵出の戦略的通路であり、太平洋への「飛び板」である。

 一方、米国にとっては中国の海洋侵出、特に太平洋への侵出を封じ込め、東アジアにおける覇権や権益を守る砦の意義がある。

●明確に敵を打ち破る作戦・戦略の存在

 中国は、接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略で米国の第2列島線以内への接近を阻止するとともに第1列島線内の米軍を撃破する構想の下に、第1列島線に対する短期高強度の戦い(Short, Sharp War)、すなわち、南西諸島全域や台湾、フィリピンなどを目標とした短期決戦による既成事実化を目標に準備し、訓練している。

 一方、米国は第1列島線へ米陸軍・海兵隊を展開させて中国海空軍の太平洋への進出を阻止するするとともに、米海空軍と同盟国・友好国の軍隊が協力・連携して中国艦隊(潜水艦を含む)を撃滅する構想の海洋圧迫戦略を採用した。

 そして、2020年から台湾を含む南・東シナ海シナリオで「Defender Pacific」機動展開訓練を実施することを決めた。

 このような状況の中で、日本の選択肢は、米国と共に第1列島線を守り「自由を守る壁」となるか、中国の軍門に下って中国と共に「抑圧の壁」となるかの二者択一であり、中立はない。