矛盾する政府の考え方

(1)日本発のインド太平洋戦略

 首相は、10月4日の国会における所信表明演説の「地球儀を俯瞰する外交」で、どう考えても矛盾する内容を発言した。

 その中で「日米同盟を基軸としながら、我が国は、英国、フランス、豪州、インドなど基本的な価値を共有する国々と手を携え、自由で開かれたインド太平洋を実現して参ります」と述べた。

 これは、首相が2012年に提唱した「セキュリティ・ダイヤモンド構想」と2016年にアフリカ開発会議(TICADⅥ)で提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を再確認したもので、米国やインド、オーストラリアも高く評価している。

 それだけに首相の本気度には大いに期待が膨らんだが、その分、最近の失速には失望も大きい。

 本来、日本はその中核となる軍事戦略を明確にすべきであったが、それを埋めたのは米のシンクタンクCSBAが今年5月に発表した「海洋圧迫戦略(Maritime Pressure Strategy」である。

(JBpress2019年6月26、27日「対中国長篠の戦で勝つことを決めた米国」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56815、「長篠の戦で中国に勝つ具体的戦略」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56817参照)

 これに対してロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2019年10月3日、露南部のソチで開かれた国際会議の場で、インド太平洋戦略について「中国を封じ込めようとする試みは不可能だ。それを試みる者は自身に損害を被るだろう」と述べている。

 この発言から見ても、インド太平洋戦略は、政治的には中国の独裁の抑圧社会を否定し、軍事的には中国の海洋侵出の勢いを止めようとするものであることは、明白であろう。