(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国でトランプ大統領弾劾の動きが起こり、民主党を支持する主要メディアが大統領を激しく攻撃し続けている。一方、弾劾手続きの最終のカギを握る連邦議会上院では、共和党側が断固として弾劾を阻む構えをみせ、民主党による弾劾への動きを「メディアを巻き込んだ大統領選挙への政治作戦だ」と非難する。
トランプ大統領の弾劾騒動は、反トランプメディアとトランプ政権との正面対決のような構図を見せているが、民主党の動きが有権者の反発を買い、逆に打撃を受けるという見方も出てきている。
ウクライナ大統領との電話会談の内容
反トランプ色を鮮明にしてきた主要メディアは、連日、トランプ大統領の弾劾を後押しする報道を続けている。だが、民主党が着手した弾劾手続きやその原因とされる「ウクライナ疑惑」について一般有権者に開示される公的な情報はほとんどない。
また、民主党が進める弾劾手続きには、他にも異例な点がある。まず、下院本会議での審議や表決がなかったことだ。これまでは、1973年の共和党ニクソン大統領への弾劾でも、1998年の民主党クリントン大統領への弾劾でも、議会では、まず弾劾手続きの開始を決める超党派の審議と投票が実施された。
だが今回は、民主党下院のリーダーのナンシー・ペロシ議長が決議案を読み上げ、弾劾調査の開始を一方的に宣言しただけだった。この点を共和党側は「大統領弾劾を始めるのに必要な情報を民主党が十分には持っていないことの表れだ」と非難する。