尖閣諸島を警備する海上保安庁の巡視船

迷走する日本の政治

 日本の政治は迷走している。特に安全保障分野においては、どこを向いてこの国の舵を切っているのか分からない。

 日本独特の空気の支配と、阿吽の呼吸とでも言うのか、国民、マスコミは全く気にするそぶりも見せない。さらに、日本のシンクタンクも警鐘を鳴らすどころか、沈黙を貫いているように見える。

 つい最近まで中国に対して警告を発していた方々も、中国へすり寄る日本政府に対して何の意見も言わないのは実に異様である。

 その発端は、昨年(2018年)10月、安倍晋三首相をはじめとする政府の要人が中国を訪問し「中国との関係は完全に正常な軌道に戻った」との認識を明らかにしたことである。

 この認識は、首相の2019年1月の施政方針演説でも述べられ、今や日本政府の統一見解になっている。

 しかし、首相訪中後も、中国は公船と称した軍艦をほぼ毎日、領海を含む尖閣諸島周辺海域に遊弋させ、施政権の奪取、あわよくば同諸島奪取のチャンスを狙っている。

 このように、中国公船(軍艦)が我が国の主権を侵害する明確な意図をもって航行し、実力によって現状変更を試みるという挑戦的行動を踏まえ、昨年12月の「防衛計画の大綱」で中国に対する評価として「安全保障上の強い懸念」を示したのではないか。

 日本政府の日中関係の正常化発言は、中国が我が国に突きつけている危機事態とは明らかに矛盾する。

 さらに米国の貿易戦争を端緒とする「中国共産党」に対する妥協のない戦いの決意の腰を折っていないだろうか。

 はっきり言えば、米国に対する裏切りである。いったい誰がそう言わせているのだろうか。