サウジアラビアが公開した、石油施設を攻撃した兵器の残骸。イランの関与を主張している(写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 9月14日未明、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ本社(同国東部のダーラン)近辺の石油施設(アブカイク・クライス)は、18機のドローンと7機の巡航ミサイルの攻撃を受け、日量570万バレルの生産能力を失った。

 失われた原油生産能力は第2次石油危機時を上回る過去最大規模であり、世界の原油供給量の6%弱に相当する。

 1979年のイランのイスラム革命に端を発する第2次石油危機では、日量560万バレル(世界の原油供給量の約9%)の原油生産能力が失われたことにより、原油価格は結果的に3倍の水準に達した。

 今回もサウジアラビアの石油施設への大規模攻撃で、原油価格は1日の上昇としては1990~91年の湾岸戦争以来の大幅な値上がりとなった(一時19%高)。米WTI原油先物価格は攻撃以前に比べ、バレル当たり若干のリスクプレミアムが付与された形で推移している(1バレル=50ドル台後半)。

 ただし、今回の原油価格の上昇は一過性のものにとどまっている。その理由は攻撃の直後にサウジアラビア政府が「生産能力を9月中に全面回復させる」と宣言したからだ。

 その後、「石油施設の復旧には数カ月を要する」との見方も出ている(9月23日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。サウジアラビアが保有する原油備蓄は約1.9億バレルであることから1カ月程度は原油供給に支障はないとされている(出荷される原油の質には問題が生ずる可能性が高い)が、復旧作業が長引けば原油価格は再び上昇することになるだろう。

軟調に推移すると思われていた原油価格

 サウジアラビアの石油施設への攻撃について詳細を論ずる前に、原油市場のその他の動きについて見てみたい。