米国ノースダコタ州のシェールオイル掘削装置(リグ)(写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は、世界経済減速の懸念などから軟調に推移している(1バレル=50ドル前半)。

 サウジアラビアの石油施設に対するドローン攻撃で1バレル=63ドル台まで急騰した原油価格だったが、その後下げ基調に戻り、2カ月ぶりの安値を付けた。貿易紛争を続けている米国や中国で自動車販売が不調なことから、輸送燃料を中心に原油需要が鈍り、年末に向けて供給過剰が深刻になるとの見方が一般的だからだ(10月8日付日本経済新聞)。

 国際エネルギー機関(IEA)は9月27日、「世界経済が悪化した場合、2019年と2020年の世界の原油需要見通しをさらに下方修正する可能性がある」と指摘した。

サウジ攻撃の原油市場への影響

 次にサウジアラビアへの攻撃で世界の原油生産はどうなったかを見てみたい。

 ロイターによれば、OPECの9月の原油生産量は前月比75万バレル減の日量2890万バレルと2011年以来8年ぶりの低水準となった。減少幅が最大だったのはサウジアラビアで、前月比70万バレル減の日量905万バレルだった。

 エネルギー情報配信会社のプラッツによれば、9月のOPECの原油生産量は前月比148万バレル減の日量2845万バレルと2009年5月以来の最低水準となった。サウジアラビアの原油生産量は前月に比べて日量132万バレル減少した。サウジアラビアへの攻撃が生産量の数字にはっきりと表れている。

 サウジアラムコは9月30日に「原油生産量が同社施設攻撃の14日以前の水準に戻った」と完全復活ぶりをアピールしており、足元のサウジアラビアの原油生産量が攻撃前の水準に戻っているとされている。だが、「攻撃後のサウジアラビアがイラクから航空機燃料の買いつけを行った」との情報もあり、「今回の攻撃による世界の原油市場への影響が今後じわじわと現われてくる」と警戒する向きもある(10月8日付東洋経済オンライン)。

 サウジアラビアに次ぐ原油生産国であるイラク(9月の生産量は日量480万バレル)でも、10月に入ってから反政府デモが激化し多数の死傷者が出る事態となっており、同国からの原油輸出に支障が生じるとの懸念が出始めている。

 世界第2位の原油生産国であるロシアの9月の原油生産量は前月比5万バレル減の日量1124万バレルだった。合意枠を超えているものの、サウジアラビアの大幅減産を見込んだ増産攻勢を行っていない。

サウジアラムコ本社がある都市、ダーラン(印のついた場所)。攻撃された石油施設、アブカイク・クライスはダーラン近辺にある(Googleマップ)