イエメン南部の港湾都市アデンで暫定政権派と衝突したイエメン南部独立派(2019年8月10日、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は、需要に対する懸念から1バレル=50ドル割れ寸前まで下落した後、OPECなどの追加減産への期待から同50ドル台半ばまで上昇している。

 まず供給面から見てみよう。

 ロイターによれば、OPEC(加盟14カ国)の7月の原油生産量は前月比28万バレル減の日量2942万バレルと8年ぶりの低水準となった。サウジアラビアの生産量は16万バレル減の日量965万バレルになったほか、イランやベネズエラの生産量も減少した。減産に合意した11カ国の減産遵守率は163%と高水準を維持している。

 OPECとロシアをはじめとする非OPEC産油国(OPECプラス)は来年(2020年)3月まで日量120万バレルの協調減産に合意しているが、国際エネルギー機関(IEA)によれば、OPECプラスの7月の実際の減産量は日量142万バレルと目標を2割上回っている。

 OPECプラスは原油価格上昇のために懸命な努力を続けているが、これに「水」を差しているのは米国である。

 8月1日、トランプ米大統領がツイッターで「3000億ドル相当の中国からの輸入品に9月から10%の追加関税を課す」ことを発表し、5日には米財務省が24年ぶりに中国を「為替操作国」に認定した。

 認定による制裁措置は今のところ明らかになっていないが、トランプ大統領は2016年の大統領選で「45%の関税を課す」と述べていた。6月末の米中両首脳の会談を経て貿易協議が従来の軌道に戻るとされていたが、7月以降進展がなかったことから、米国は8月に入り中国に再び圧力を強め始めたのである。米中両国の原油需要は世界全体の35%に相当することから、8月7日のWTI原油先物価格は1バレル=50.52ドルと1月中旬以来7カ月ぶりの安値となった。