財政出動以外に手はない

 今後の景気動向に産業界の関心が集まっている中で文在寅大統領は9月16日の会議で「経済は正しい方向に進んでいる。雇用と所得が量質ともにはっきりと改善している」と述べた。

 確かに一部指標だけ見るとそうだが、一般的は景況感からはかなり距離がある発言だった。

 2019年のGDP成長率も2%割れとなる可能性が強まっているのだ。では、政府はどんな手を打つのか?

 積極財政による景気刺激、雇用対策にますます力を入れる。これ以外に手がないうえ、2020年4月に「政治決戦」といわれる総選挙を控え、政治的にも要望が強い。

 進歩系のハンギョレ新聞は「2017年9月が景気の山と宣言…積極財政が力を得る」という記事で次のように報じた。

「景気の頂点(の時期)を宣言したことで、文在寅政権の政策対応が適切だったのかの是非についての論争も過熱するとみられる」

「景気下降局面に最低賃金引上げ、週52時間制導入など経済主体に負担を加重したのではないかという批判が出てくることがあり得る」

「経済活力を生かすために規制革新と拡張的な財政政策の速度を上げるべきだという意見も力を得るだろう」

 今の政権に近いとされるメディアだが、政策についての賛否の意見が出てこざるを得ないことを認めたうえで、処方箋として積極財政を上げている。

 問題は、その効果だ。財政拡大の効果はもちろんある程度は出るだろう。だが、「2020年の景気はさらに悪化する懸念が強まっている中で効果は限定的だろう」(民間シンクタンク役員)という意見が多い。

「政府も産業界も、IMF危機直後のようなV字型回復を期待しているが、下手をするとL字型長期低迷になりかねない」(韓国紙デスク)

 最近、大企業の経営者から公然と「こんなに経済環境が悪いことは初めてだ」という発言が頻繁に出ている。

 VかLか? 残念ながら、自信をもって「V」と答えるエコノミストや経営者は少ない。