強硬路線より激しい気性に辟易

 元米外交官で、現在主要シンクタンクの客員研究員は、ボルトン氏解任を巡る様々な反応を踏まえて筆者にこう指摘している。

「トランプ大統領がボルトン氏を更迭するだろうという噂は以前からあった。解任するのは時間の問題だった」

「ホワイトハウスで働く私の知人によれば、大統領がボルトン氏を切った理由は、同氏の強硬外交路線が政権内部で突出していたこともあるが、彼の激しい気性に大統領は匙を投げたという」

「ボルトン氏は行く先々で敵を作る。部下や同僚を苛める。自分が常にお山の大将じゃないと気が済まない。気に食わないことがあると、激怒し、怒鳴り散らす。一緒に働く人は誰一人彼を信用しない」

「しかも持論を支持してもらうため、議会共和党の数人の議員に情報を流す。フォックス・ニュースのインタビューに積極的に応じては、あたかも大統領を代弁するかのようにコメントをしていた」

 では、トランプ大統領は、そんなボルトン氏をなぜ補佐官に任命したのだろうか。件の研究員は続ける。

「トランプ大統領がボルトン氏を国家安全保障担当補佐官にしたのは、当時、三顧の礼で迎え入れたH・R・マクマスター陸軍大将が突如辞めてしまったからだ」

「ボルトン氏はその時、ホワイトハウスに数人いる外交担当顧問の一人だった。むろん周辺はブッシュ親子に仕えた共和党内でも外交政策の一人者として評価していたことは確かだ」

「大統領としては身近にいたボルトン氏を渡りに船とばかりに補佐官に任命したのだ」

「ボルトン氏には強力な後ろ盾がいた。億万長者でトランプ氏の最大の政治献金者のシェルドン・アデルソン氏。そのアデルソン氏がボルトン氏をトランプ大統領に推薦したのだ」

「別の後ろ盾は、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相を中心とするイスラエル政財界と米国内のユダヤロビーだ。ボルトン氏が反イランの急先鋒なのはそのためだった」